タテマチノイエお試し住人

タテマチノイエお試し住人

2018/9/1

お試し住人


はじめまして、本日からタテマチノイエお試し住人になりました、名古屋市在住のミズノツクルと申します。

 

私は昨年の晩夏、知人から紹介されたまちやどのイベントに参加するために郡上八幡を訪れ、それから郡上になんとなく興味を持ったまま一年が経ち、ちょうどタテマチノイエお試し住人募集(9.10.11月)のニュースを見て、応募してみようかと思ったことがきっかけです。

 

お試し住人に興味をもった理由として最初にあったのは、2拠点生活をしてみたいという思いを長らく持っていたこと。ちょうど少し前からフリーランスとして独立して身軽に動けるようになっていたタイミングであり、お試し住人に求められる条件もそれなりに満たしていたからです。

 

お試し住人のお試し(8月19日)

名古屋〜郡上八幡の高速バスに乗って、郡上八幡に到着したのは午前10時過ぎ。このバス路線は2018年7月に岐阜バスが新設したばかりの路線で、名古屋駅〜郡上八幡城下町プラザまでをおよそ1時間30分で結びます。往復運賃は割引が適用されて4,000円。1日2便が運行しており非常にお得で便利です。

 

現地に着いてまちやど管理人の木村さんと合流すると、さっそく現在のタテマチノイエの様子を拝見しました。まだ改修工事に入る前の、古民家感の色濃く残る……というか古民家。そのもの。具体的な建築年はもうわからないというぐらい、年季の入ったおうちです。とにかく面積が広く、玄関から奥に向かってまっすぐ長く伸びているのが特徴的。郡上八幡に古くからあるお宅に特有のレイアウトだそう。 

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そしてタテマチノイエの立地は、神社への参道に面して隣家と横並びに連なる住宅街の真っ只中。観光客が多く集まるエリアからそれほど離れているわけではないのですが、とはいえ周辺には観光客向けのお店はほとんどありません。地域の皆さんのプライベートな生活圏に、完全に食い込んでいます。諸事情あって大きめのスーツケースを引っ張っていた私は明らかに浮いていました。

 

訪問当日の晩はちょうどタテマチノイエがある立町地区で郡上おどりが催されるとのことで、日中に一時間ほど郡上おどりの講習会を受けて、付け焼き刃の踊りを覚えて参加。振り入れをして盆踊りに加わるのは初めての経験でしたが、なるほど近年の噂に聞く通り、“ゾーン”に入るとトランス状態に陥って延々踊り続けてしまうというのは間違いなさそうだという手応えを得ました(なお噂の具体的な情報源は特にないです)。

 

移住する上で大切なこと

タテマチノイエはゲストハウスまちやどから発展して生まれたシェアハウスのプロジェクトですが、まちやど自体がシェアハウスに近いゲストハウスであり、単なる宿泊施設とは趣を異にしています。まちやどは「郡上が好き・まちやどが好き」という人が、郡上を訪れたときに滞在するための『家』みたいなものですかね……(今回私が訪ねたときも、しばらく郡上に滞在中の住人さんがおりました)。 

 

タテマチノイエはシェアハウス……住居としての色が濃くなり、郡上に生活拠点を持ちたいと考える人が長期滞在できるようになります。また1階のロビー部分には売店・飲食店を設置し、地域に開けた食堂を運営していきます。郡上に移住したい人が、郡上という地域につながり、根付くための第一歩としての機能を果たしていくはずです。

 

近年、地方移住はよく耳にするトレンドです。一方で実際に移住を経験した人の失敗談として、エイヤッと移住してみた結果、地域に馴染むことができなかった……というのもまたよく耳にする話。実のところ、私自身もかつてそれに近い経験をしました。

 

当時、移住に強く興味を持って地方での働き口を探していた私は、地縁の全くなかった福岡の企業で採用されることになりました。転居にあたって、少しでも早く地縁につながればと考えてシェアハウスに住むことにしたのですが、その管理人とトラブルが生じ、早々にそこから出ざるを得なくなりました。そして職場でも要求される業務レベルについていくことができず、結果として期待に胸を膨らませた福岡での移住生活は、わずか半年で挫折に終わりました。 

 

事前の準備も、自分の能力も足りていなかったと思いますが、何よりも不足していたのはコミュニケーションだったと省みます。かといって身振り喋り心持ちを正せばどこでも受け入れられるという話でもないし、そもそも正そうにも、コミュニケーションの形に決まった正解がありません(あったら楽なのになぁ)。

 

そんな自分の経験を通じて、どこかへ飛び込む人とそれを受け入れる人の双方に、「この人とお互いにうまくやっていけるのだろうか」ということを確かめるコミュニケーションの”お試し期間”は必要だなと思うようになりました。それは移住という枠に限らず、友達・恋愛・仕事など、人と人が出会って向かい合うあらゆるコミュニティにおいて。 

 

ところで、私が福岡で唯一の心の拠り所になっていたのがふらっと入って通うようになった街中のダイニングバーで、そこで出会った人々がいたお陰で、辛うじて福岡という街を嫌いにならずに済みました。一緒においしくご飯を食べられる関係というのは、「お互いにうまくやっていける」かどうかを測る重要な要素だと個人的には感じます。 

 

そういった意味で、単純にシェアハウスとして住居だけを提供するにとどまらず、郡上にいる人・郡上に来る人と食事を囲む食堂まで用意しようというタテマチノイエは、郡上という町に根付くためにこれ以上ないぐらい『お膳立て』されたコミュニケーションのための空間だと思うのです。

 

『町に酔っ払う』ということ

郡上おどりに参加する前に、前回郡上に来たときに行きたいと思いながら行けなかったクラフトビールのお店『こぼこぼ』に行くことができました。途中から郡上の友人も合流して、酔っ払いながらこぼこぼの小さな看板娘さんと遊び、酔っ払いながらおどりに加わり、酔っ払いながらうまば農園のトマトの呼び込みをし、酔っ払いながらスナックに行き、翌日はすっかり二日酔いでした。去年もわりとこんな感じの一泊二日でしたが、もともと郡上に縁もゆかりもなかった人間をこれだけ『町全体で』酔っ払わせてくれることは素敵だなと思いました。 

 

福岡への移住に失敗したあと、地元の名古屋に戻ってきましたが、名古屋を終の棲家にするという意識はあまり芽生えません。以来、「ここに移住する未来はあるのかな?」という気持ちで旅行するようになり、旅先ではなるべく土地の雰囲気を感じられるよう、ゲストハウスに泊まったりスナックに行ったりするようにしてきました。それら訪ねた町々も素敵な場所ばかりでしたが、二度目の郡上への旅はそれらとはいい意味で異質な思い出が残って、名古屋に戻ったあとも違和感が残りました(二日酔いではないです)。

 

なのでやっぱりタテマチノイエの、そして郡上八幡の住人としていちど暮らしてみたいな〜〜〜!という気持ちでいたところ、縁あって本日9月1日からお試し住人として暮らすことになりました。「タテマチの酔っ払い」ぐらいのポジションはなんとか目指していきたい所存です。よろしくお願いいたします。